高専4年の頃に学校に導入されたコンピュータに初めて触れ、そこでFORTRANの言語を学習する折に、円周率の多桁計算のプログラムに出会いました。これがきっかけとなり、以来計算の桁数を少しずつ延ばしてきました。パソコンやソフトの機能向上により、今年8月、ついに5兆桁に到達しました。
円周率の計算記録は過去スーパコンピュータによって打ち立てられてきた歴史があります。自分は当然使用する機会は無く、パソコンのみで記録に挑戦してきた訳ですが、不可能とは思いながら、いつかはスーパコンピュータの記録を抜いてみたい願望は常々ありました。
昨年8月に筑波大で久々にスーパコンピュータによる記録が塗り替えられ、約2兆5千億桁(従来の記録の2倍)の計算に成功したのです。やっぱりスーパコンピュータは凄いと思いましたが、この年その記録がパソコンによって破られたのです。更新はわずかですが約2兆7千億桁。計算時間はスーパコンピュータの比ではありませんが、パソコンでできた事が非常に新鮮に映りました。パソコンでも時間はかかるができるんだと。
年が明けて、HP上ですが、円周率の計算ソフトを作成しているAlex氏と出会いました。彼は1兆桁を超える計算が可能なソフトをWindows版で作成していました。最大計算可能桁数は予測値ですが40兆桁。しかしこの桁数はハードウェアが対応できません。手持ちのパソコンの能力から3ヶ月程度で計算できる桁数を算出し、これが今回達成した5兆桁です。今年は猛暑でしたが、夏が来る前に計算を終了させたい事から5月4日に計算を開始しました。理由のわからない停止が1回、電気の使いすぎによる停電が3回、これを何とか乗り越えて(計算ソフトは途中で停止しても、そこから計算を続行できる機能を追加してあります)3ヶ月後の8月3日に計算が完了したのです。
検証については2つ行う必要があり、1つは計算した16進の値で、これについては別の式で計算した最終桁手前32桁が一致している事で確認しています。もう一つは16進-10進変換です。これについても64ビットの素数での割り算の余り値が一致している事で確認しています。どちらもパソコンにより短時間で確認するための方法です。5兆桁の計算は極めて高い確率で正確に行われていると思われます。
この5兆桁は、一時的ではありますがスーパコンピュータの記録を抜いています。これができたのは最近スーパコンピュータでの計算が行われていない事情もあります。ラッキー!!!
記録を発表した後、報道機関からの数々の取材があり、これには正直、対応が大変でした。今後はギネスブックへの記録申請、次の目標である10兆桁の準備に取りかかりたいと思っています。
計算に使用したチュドノフスキーの公式。5兆桁手前100桁の値は、2597691971 6538537682 7963082950 0909387733 3987211875 6399906735 0873400641 7497120374 4023826421 9484283852 となる。
昭和50年度 機械工学科 卒業。