職場で「どこの高校出身ですか?」という質問に、「長野高専です。」と答えるととても驚かれます。なぜなら私は今、ホテルでウエイトレスとして働いているからです。正確には、高校と高専は違うのですが、中学校を卒業した後の進路という意味でそのように答えています。仕事の内容は、結婚式や宴会で料理と飲み物を運び、会場のセッティングや片づけなどです。
建築士になりたいと思い、長野高専に入学した私が、進路変更するきっかけはホテルでのアルバイトでした。すてきな笑顔で接客する社員さんを見たり、お客様から「ありがとう。」と言われると、とてもやりがいを感じました。高専を卒業した人の多くは技術者となり、モノづくりという分野の仕事に就きます。私が学んでいた環境都市工学科は橋や道路を作り、情報系の学科は生活をより豊かにするソフトウェアなどを作っています。
しかし、私が魅力を感じた「接客」という仕事は、形に残るものではありません。自分が作り出したモノが誰かのためになるのではなく、私自身がお客様のために働く仕事です。もっと接客について勉強したい、料理やワインも詳しくなりたいと思い、高専卒業後、国際観光専門学校への進学を決めました。高専の同級生には、私と同じように進路変更をした人、また、高専で3年間勉強した後、大学の別の学部に進学した人もいました。
高専を卒業して技術者になる道を選択しなかった私ですが、高専の卒業生であることを誇りに思っています。「他の人と同じことをしてはつまらない。おもしろいことは自分達で作り出そう」という考えを持っているのが高専生だと思います。社会に出て働くようになっても、全国各地で高専カンファレンスを開催し、情報を共有しています。私も何回か参加したことがありますが、皆、知識が豊富です。また「わからないことは自分で調べよう」という考えを持っています。そんな友人達に影響を受け、私も現在の職場で、めずらしい食材や調理方法があれば、自分で調べて、お客様から聞かれたときにすぐ答えられるようにしています。
中学生の時点では、自分がどんな仕事に向いているのかまだよくわからないと思います。高専で勉強していくうちにその専門分野がもっと好きになることもあるし、たとえ他の道を選択してもしっかり勉強していれば、社会で働くために必要な力を身に付けることができます。どんな選択をしても今の自分が興味を持っていることを勉強することは、将来の自分にとって無駄ではありません。
自分の好きな事をとことん追求する楽しさを知りました
平成12年度 環境都市工学科卒業。
あやうく4年生を2回やるところでした。その後、接客の勉強をするため国際観光専門学校国際ホテル学科に進学。卒業後は、東京のシティホテルに就職。長野高専の同級生と結婚し長野に帰省。現在は人材派遣会社に所属し、ホテルにてウエイトレスとして勤務。趣味はバンドのライブを見に行くこと。いまだにライブハウスに通っています。
(本記事の初出はマナスリンク様から発行されているフリーペーパー「EM高専カンファレンス2」です。著者の伊藤加奈さんとマナスリンク様の許可を得て転載させていただいております。)