1. HOME
  2. 研究・産学連携
  3. 研究者ピックアップ
  4. 電子情報工学科教授 押田京一

研究者ピックアップ

第4回

顕微鏡で真実に迫る

電子情報工学科教授 押田京一

偏光顕微鏡とは

 とりあえず偏光顕微鏡の画像を見てみましょうか(写真)。
 光は波のように振動しながら進みますが、普段私たちが見ている光は、その振動の向きがバラバラなんです。この振動の向きをひとつに揃えた光が「偏光」と呼ばれて、「偏光」を結晶に当てたとき、この結晶の構造によって屈折する方向が変わります。この屈折の様子を観察して、結晶の組織を調べるのが偏光顕微鏡です。
 人間の目にわかりやすいように、屈折しながらレンズに届いた光は、「鋭敏色板」というフィルタを通して鮮やかな色を付けています。黄色や青色に見える箇所が結晶が同じ向きに揃って並んでいる「配向」という状態で、さらにこの色の違いで配向の向きもわかるのです。


(クリックで拡大)ピッチ(石炭や石油を原料に生まれる、カーボンファイバーのもととなる材料)を熱処理し、カーボンが形成される様子を示している。 見た目では真っ黒なカーボンが、偏光をすることによりその組織が鮮やかに見え、あたかも微細な空間に現れた小宇宙のようである。 黄色や青色の小球状の部位が結晶配向している箇所、マゼンタが配向していない部位で、熱処理の温度を上げることで試料の全てが配向し、カーボンとなる。

無限の可能性を持つ炭素

 私の研究はこの顕微鏡を利用した、主に炭素材料の組織構造の解析になりますが、この写真を画像処理することで、「効率的に、正しく」結晶組織を評価することに挑戦しています。
 機械的強度や、電気や熱の伝わりやすさなどの炭素材料が持つ特性は、結晶組織の配向で大きく変わります。たとえばダイヤモンドなんかも炭素そのもので、電気を通さず、きわめて堅いのはご存じかと思いますが、逆に変形に弱くてもろいです。これが同じ炭素材料のカーボンファイバになると、電気を良く通すようになり、曲げることも可能となり、引張りにも強くなります。また、同じカーボンファイバであっても、結晶の並び方が変われば性能が大き変わります。つまり、できあがった炭素材料の性能を評価するには、結晶組織を観察することがきわめて有効なのです。
 このカーボンファイバですが、普段の生活で使われている様々なモノに混ぜ込むことで、「軽くて、丈夫な」モノに変身させることができます。すでに飛行機の機体や、テニスのラケットなどにも使われていますね。企業から調べてほしいと送られてくる試料もものすごく堅くて、カッターで細かくしようとすると、あっと言う間に刃がボロボロになります(笑)

大量生産に向けた「正しく、速い」結晶構造評価を

 ところで、この企業から送られてくる試料はいわゆる原材料の状態で、大量生産された原材料はメーカーなどに出荷されていろいろな製品に利用されます。ところがこの大量生産された原材料は、偏光顕微鏡で「人間が観察する」程度でしか評価が行なわれておらず、この人間の目ってのがかなり怪しいです。しかもこの評価結果がずれることはダイレクトに性能に影響してしまい、メーカにとっては死活問題になります。
 そこで、この評価の部分を画像処理によってより正しく、より効率的に評価できるようになれば、大量生産や材料設計において大きな力になることができると踏んでいるのです。コンピュータを使って評価するには当然評価の基準も決めてやる必要もありますので、評価基準の設定も目的としています。

顕微鏡で真実に迫る

 新しい材料を作り出すには、原子レベルで材料を作って、評価していく必要があります。ですので材料の開発・評価には偏光顕微鏡に限らず、透過電子顕微鏡といった原子レベルに近いスケールを見ることができる顕微鏡で観察したり、X線や光、電子線を利用した構造分析も行います。
 ただ気をつけないといけないのは、ある一点を見て全てを見た気になってはいけないことです。やはり材料全体を眺めた場合に見えた構造と、きわめて狭い領域を観察した場合に見えた構造は違うんですね。狭い領域についても、多くの箇所を観察し、統計的に評価しなければいけません。
 また、顕微鏡以外の構造分析をした場合も顕微鏡で得られた情報と異なる場合もあり、これも「どこを見ているか」「何を利用して調べているか」で変わってくるんですね。ですので、何を、どの条件下で利用したのかははっきりさせることであったり、複数の評価方法を組み合わせて多角的に調べることは、材料の真実に迫るには大事なことなのです。

科学に触れられる位置にいたい

 実を言うと、私は地道に基礎研究をやっていることが楽しかったりします(笑) よく学生には「科学に触れられる位置にいたい」と言っています。もともと私は企業でハードウェアの設計・開発をしていましたが、やっぱり科学技術を飛躍的に発展させるブレークスルーは、材料が握っていると思うんです。電気設計やソフトをいかに工夫しても、ものすごい材料が出てくれば、それら全てがすっ飛んでしまいますから。
 その興味が高じて、原子レベルの研究にものめりこんでいったのですが、いまの観察・評価からあたらしい材料が見いだされればおもしろいでしょうし、いま開発している評価手法が材料の生産現場で活躍するようになるとうれしいですね。

PLOFILE

電子情報工学科教授 押田京一 1983年に信州大学大学院工学研究科電気工学専攻を修了し、東京芝浦電気株式会社での勤務を経て、1990年に本校電子情報工学科に助手として赴任。助教授を経て2001年より教授。電気学会、炭素材料学会に所属し、画像処理の応用、炭素材料の電子機能性、組織・構造解析などの研究に従事。博士(工学)。(2011年5月掲載)

このページの先頭へ戻る

独立行政法人 国立高等専門学校機構 長野工業高等専門学校
〒381-8550 長野市徳間716
総務課総務係 026-295-7003 庶務関係 学生課教務係 026-295-7017 学業、入学者募集、進学関係
総務課人事係 026-295-7004 人事関係 学生課学生係 026-295-7018 学生支援、就職関係
総務課財務係 026-295-7009 契約、施設貸出関係 学生課寮務係 026-295-7020 学生寮関係
総務課出納係 026-295-7010 会計、授業料、共済関係 学生課図書係 026-295-7005 図書関係
総務課研究協力・産学連携係 026-295-7134 産学連携関係
総務課施設係 026-295-7013 施設関係
学校案内
学科・専攻科
入学案内
高専ライフ
就職・進学