4年「エンジニアリングデザイン実践」の授業で、A-26チームが境港バイオマス発電所の現場見学を行いました(6月28日(土))
学科再編から4年目となり、今年度から工学科4年生による「エンジニアリングデザイン実践」の授業がスタートしました。エンジニアリングデザイン実践は、企業などの現場の課題や、学生たちが考えた社会課題に対して、長野高専で学んだ知識や技術をフル活用して、課題解決のアイディア検討や試作ものづくりなどに取り組むものです。
今年度の4年生は、4~5名ずつ37班に分かれ、週2コマ(180分)の授業時間で1年間かけて、それぞれの課題に取り組んでいます。
このうち、A-26テーマの2つの班が、6月28日(土)に企業現場の課題解決のため、現場見学を行いました。当日は、学生9名(もう1名は、当日欠席)が参加しました。
A-26テーマでは、鳥取県境港市にある合同会社 境港エネルギーパワー様からの課題に取り組んでいます。境港エネルギーパワーでは、木質バイオマス発電所を運営しており、クリーンなエネルギー源として、これからのカーボンニュートラル社会を支える重要基盤と考えられています。バイオマス発電所における課題として、蒸気タービンの復水器へ送る冷却塔からの冷却水ポンプにおいて、水の中の異物を取るためのストレーナ(※)の改善に取り組んでいます。
現状、2台ある冷却水ポンプのストレーナの一方が詰まると、片方を止めて作業員2人で1時間程度の清掃作業が必要であり、発電所運営において改善が必要な状況です。ブラシでゴミを除去する市販品もありますが、ブラシが摩耗するため、消耗部品が無いことが要望されています。この課題を解決するために、ポンプを稼働させたまま、作業員1人でも清掃ができるストレーナの開発が求められています。
4月に課題テーマが決定した後、企業とのオンライン打合せを何度か重ね、課題の確認やアイディア検討などを進めてきました。小型のサンプル(1/6モデル)を送っていただき、アイディア検討も行いましたが、実物を見ることや、現場の作業の様子を生で確認することが重要であるため、今回の現場見学が計画されました。
授業の合間で、鳥取県境港市へ往復するため、6月27日(金)の授業終了後に長野を出発し、羽田空港付近で1泊した後、6月28日(土)に米子空港へ移動し、現地では企業の方に車で送迎していただき、6月28日(土)午後に現場の見学を行いました。
現場見学では、最初に、発電所のしくみなどを説明していただき、発電所内を一通り見学させていただきました。その上で、課題となっているストレーナの設備に向かい、現場での清掃作業の様子を実際に見せていただきました。学生たちは、実物の大きさに驚きながらも、実際の清掃作業工程や付着するゴミの性質などを確認し、アイディアの実現可能性について議論を深めていました。また、小型のブラシ付きの手動洗浄式ストレーナも見せていただき、アイディアのヒントを得ている様子でした。
発電所の現場見学後は、境港駅付近のホテルに宿泊し、夜はゲゲゲの鬼太郎で有名な「水木しげるロード」を見学するなど、オンタイムだけでなくオフタイムも満喫することができました。
翌6月29日(日)に境港駅を後にして、長野に戻り、学生たちは月曜日からの通常授業に戻っております。
今後、エンジニアリングデザイン実践の授業では、前期最後7月29日(火)に中間発表会を実施して、中間の進捗報告が実施されます。その後、1月の最終発表会に向けて、試作品のものづくりやそのフィードバックを繰り返すことにより、課題解決に取り組む予定です。
謝辞 最後に、本件の実施にあたり、授業へのご支援をいただいている長野高専技術振興会様、当テーマにご支援いただいている東京エネシス様ならびに境港エネルギーパワー様のご支援により、今回の現場見学を含む授業の取り組みを実施できておりますことを、ここに感謝申し上げます。
※用語の説明:「ストレーナ」とは、身近なものでは台所のシンクのざるのようなもので、発電所では冷却水の異物を取るために必要な設備部品です。
写真①:現場見学に参加した学生9名と、境港バイオマス発電所の髙橋所長(左)、東京エネシスの千年様(右)の集合写真。背後の大きな建物が、バイオマス発電所のボイラー施設とタービン建屋など。
写真② : 左側の大きな冷却塔から右側のタービン建屋を結ぶ、冷却用ポンプ周辺の見学の様子。
写真③ : 2つあるストレーナのうち、手前は清掃作業のためにストレーナとその蓋を外した状態、奥は稼働中のもう1台のストレーナ。
写真④ : ストレーナに付着したゴミの様子。今回は、作業見学のためにゴミが一部しか付着していない状態ですが、詰まっている場合はストレーナ全体にゴミが付着するそうです。
写真⑤ : ストレーナに付着したゴミを除去する作業の様子。高圧洗浄機を使用してゴミを剥ぎ落としています。